ものぐさ楽曲分析

自由きままに不定期な楽曲アナリーゼ。

荒井由実(松任谷由実) - ひこうき雲のアナリーゼ ~J-popで読み解く、モーダル・インターチェンジ その2~

さてさて、今回もやってまいりましたよ!



今回の対象楽曲となりますのは、ユーミンひこうき雲です!


スタジオジブリの映画、風立ちぬの主題歌としてリバイバル・ヒットしたこの曲は皆様のご記憶にも新しいかと思われます。


そんなひこうき雲の楽曲構造に迫って行きたいと思います♪




前回同様、この曲にもモーダル・インターチェンジが使われているのですが、該当するのはこの曲のサビの部分になります。



さっそく、サビのコード進行を書き出してみましょう!





Key = E♭

│E♭ - Gm│Cm7│Gm7 - B♭m7│A♭△7│

│Gm7│A♭△7│Fm/B♭ - B♭7│Fm/B♭ - B♭7│




と、このようになります。




例によって、ディグライジングしていきますね~。


│Ⅰ - Ⅲm│Ⅵm7│Ⅲm7- Ⅴm7│Ⅳ△7│

│Ⅲm7│Ⅳ△7│Ⅴ9 - Ⅴ7│Ⅴ9 - Ⅴ7│


こんな感じになりますね!







ここで、本題に入る前に7小節目、及び8小節目に出でくるオン・コードについて説明しておきます。


[Fm/B♭]についてですね。




この和音が何故[Ⅴ9]なのかというと、
まずは構成音を見てみましょう。


Fmの[ファ・♭ラ・ド]さらに、ルートの[♭シ]ですね!




で…

ルートの[♭シ]から見たときに、
それぞれ[ファ→5・♭ラ→♭7・ド→9]となりますね。


B♭9 → [♭シ、レ、ファ、♭ラ、ド]
Fm/B♭ → [♭シ、ファ、♭ラ、ド]


つまり、構成音的にB♭9と近似しているが故に、[Ⅴ9]として考えて問題ありません。





ちなみに、このコードはⅡm/Ⅴとしても考えられ、ケーデンスにおける[Ⅱm - Ⅴ]が1つになった形とも解釈できます。


[Ⅴ - Ⅰ]の運動の際に[Ⅱm/Ⅴ - Ⅰ]と置き換える事が可能という訳です。
さらに、代理コードの法則により分子の[Ⅱm]を[Ⅳ]に置き換え[Ⅳ/Ⅴ - Ⅰ]とする事も可能です。

これは言い換えると、前回出てきた[♭Ⅶ/Ⅰ]型ですね♪




J-popでは、このような形が頻出するので覚えておくと重宝します(笑)



ひこうき雲では[Ⅱm/Ⅴ]と[Ⅴ7]が交互に現れているわけですね~。




と、いきなり横滑りからスタートしましたが…(笑)

本題に戻りましょう。





この曲のサビのコード進行において、メジャー・ダイアトニック環境外から呼び出された和音が1つありますよね?


それの和音とは、どれでしょう?








正確は…

B♭m7[Ⅴm7]です!


では、この[Ⅴm7]はどのモードの和音でしょうか?





真っ先に思い浮かべるのは、同主短調のE♭マイナー・キー(エオリアン)でしょう。



しかし、B♭m7の構成音を調べてみると(♭シ・♭レ・ファ・♭ラ)となります。


E♭メジャー・キーから見た場合、変化している音は(♭レ)のみですね?


E♭メジャー・スケールを[♭7]させると、E♭ミクソリディアンとなります。


つまり、この和音はミクソリディアンへのモーダル・インターチェンジだと考えるのが自然です。






さらにこの事はテンションからも説明可能です。


該当部分の譜面を見て下さい。

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※調号忘れてます。ごめんなさい…。(シ、ミ、ラにそれぞれ♭が付きます)


B♭m7の所でコードに対して(9,11,13)のテンションが使用されていますね?




仮に、E♭マイナー・キーへのモーダル・インターチェンジだと考えた場合使えるテンションはどうなるでしょうか?


E♭マイナー・キーにおける、B♭m7[Ⅴm7]では使用可能なテンションは(11)のみです。



強引に使用したとしても…

その他のテンションは(♭ド→♭9、♭ソ→♭13)ですので、譜面とは音が違ってきてしまいますね。


※マイナー・キーの[Ⅴm7]はメジャー・キーの[Ⅲm7]である事を踏まえると理解がしやすいかと思います。







では、ミクソリディアンで考えると…

ミクソリディアンの[Ⅴm7]は、メジャー・キーの[Ⅱm7]であるので、使えるテンションは(9,11,13)と全て当てはまりますね♪




以上のような理由から、該当のB♭m7[Ⅴm7]はミクソリディアンへのモーダル・インターチェンジだと言うことができるのです!!





どうでしょうか?
今回は少し複雑な説明になってしまったかもしれません…。


しかし、このような複雑な事象を楽曲の中に盛り込み、しかもヒット曲として世に送り出してしまう所が、ユーミンの凄い所でもあるのです!




今回はこれでアナライズ完了です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます♪


それでは、お疲れ様でした~♪